ドームに虹が架かった日
前日の雨はこの時のためだったのかもしれない。
2019年6月8日、ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 5th LoveLive! ~Next SPARKLING!!~の1日目、アンコールの期待が渦巻く西武ドームに虹が架かった。
そういう企画が事前にあったのかもしれない、というかあったんだろう。
私は知らなかった。この手のファン企画が多すぎて把握するのを諦めてしまったのだ。「どうせ成功しないんだ・・・」と擦れた感情が、そういった企画を確認することから遠ざけていた。
そもそもライブに来る数万人に内容を周知し、実際行動に移してもらうことなど、生半ではない。だからできなくても仕方ない、と思っていた。
しかしこの日、西武ドーム全体に虹が架かった。なぜこれが可能だったのか、ライブの時間と同じくらい、つまり30秒くらい考えてみた。
- ライブのテーマと虹の相性が良かった
言わずもがな、今回のライブの看板となる映画のタイトルが“Over the Rainbow”だし、そもそもAqoursと虹は関係が深いため、再現するにはもってこいなモチーフであったことは、この行為が抵抗なく受け入れられた要因と言っていいだろう。あとドームの形状が円形で虹と近い。(これはあんまり関係ないと思うけど…)
- アンコール時という時間の猶予があるタイミングだった
この虹もすぐに架かったわけではない。虹が架かるまでに時間が掛かった。ステージ正面のスタンド席にいた我々(私と連番者)はアンコール当初2人で巨大な「A」を作って遊んでいたし、(ラブライブは遊びではない。念のため。)周りの「ん、あの辺虹になってない?」という話し声が聞こえるまでは、その光が意識的に作られたものであることに気づかなかった。そこから見よう見まねで「A」フォーメーションを解き、色を変え、とやった頃にはだいぶ時間が経っていた。アリーナがスタンドの様子に気づき、みかん色に染まるまでには更に時間を要した。
もしこの虹が例えば「この曲のこの瞬間に!」というものだったら、やっぱり成功はしていなかっただろう。つまり、事前に内容を知らなかった人にも自然と伝わり、実行できるものであったことが大きいと考えた。
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完成した瞬間に思ったことは「やればできるんじゃん」だった。この虹を架ける行為は海外公演では以前成功していたと聞くし、今回は日本におけるその再現に過ぎないのかもしれない。だからそんなにはしゃぐのはおかしいのかもしれない。
知るか。私は初めてこの目で見たんだ。感動くらいさせろ。減るもんじゃないし。
ともかく、キャストが少しでも驚きを持ってあの光景を見てくれたのなら、それで良かった、と思う。良かった。そう思ってもらえるのなら、後追いだろうがなんだろうが関係ない、やっていいんだ。
そして、いつもAqoursには一方的にやられっぱなしだったので、ささやかながら反撃ができたことが少し嬉しい、とも思った。
アンコール後はユニットごとに3曲披露した後Next SPARKLING!!とともにフェードアウトしてしまったため、アンコール後のMCがなく、この光景についてその場でキャストからコメントが得られることはなかった。でもそれでいいと感じた。あの捌け方はとても美しかったし、そもそも何かを言ってもらいたくて、見返りを期待してやったわけではない。観客席の光景を見た時の一瞬の表情、それだけで充分だった。
なんて、企画者でもないのにこんなことを言うのは烏滸がましいかな。
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アンコールから終演まで、私はペンライトをエメラルドグリーンで通した。アンコール一曲目はAZALEAだったので良かったのだが、残る2ユニットの曲中にエメラルドグリーンを掲げるというのは若干の背徳感、とまでは言わないにしても違和感はあった。同様のことを感じている人は大勢いただろう。ユニットカラーや推しの色に変えたいであろうに、それでもあの虹を壊さず保ち続けようとする皆さんの意志が頼もしく感じられた。
その虹も消えてしまった。これでいい。虹は儚く消えてしまうものなのだから。
消えてゆく虹に約束しよう、忘れないよいつまでも
そしてAqoursは、その虹を越えていく。
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No Rain, No Rainbow!